みやざき農業日誌

株式会社 風土のスタッフブログです。
風土スタッフの日々や、野菜に関する記事を記録していきます。


訃報

義理の父が天に召された。

父は昭和の頃に里芋の商いで一時代を築いた人で、名前を大村貴紀という。
およそ常人の物差しでは測れない、高濃度に凝縮されたエネルギーの塊のような人だった。
 
入院中に容体が急変し、あっという間に逝ってしまったので、
感謝の言葉もお別れの言葉も言えなかった。
(事業のことも、残った借金のことも、何も聞けなかった)
 
義理の母は、病院から車で5分くらいの自宅に戻っていて、
病院からの連絡でかけつけたが、間に合わなかった。
妻と私は病院から遠いところに自宅があったため、長男、次男と、
一歳になったばかりの三男を私が見ることにし、妻が病院に向かったが
「荷物の搬出をした」と言っていたので、状況の理解すらできないままに
時が過ぎていったのではないかと思う。
 
昔から人の言うことに聞く耳持たずというか、自分の信念だけで行動する人だった。
今回も呼び止める間もなく勝手に逝ってしまわれて、
みんなあっけにとられていたように思う。
 
そんなわけで、お別れぐらいはゆっくりしたいと、家族と親戚と、従業員さんで送った。
極度の混乱の中で葬儀をしたので、親戚の中には連絡が遅れた人もいて、
遠方にお住いのこともあり、間に合わないのではないかと肝を冷やした。
 
当然、「どうして葬儀に呼んでくれなかったのか」とお怒りになる方もいて
申し訳ない気持ちになったが、状況をお話しすると許していただけた(と思っている)。
 
葬儀の翌日にお世話になった方々へFaxで訃報をお送りすると、
次々にお電話をいただいたり、線香を上げに来ていただいたりしていて、
久しぶりの方も多いので父も喜んでいるのではないかと思う。
 
いろいろとご迷惑をおかけしているお取引先様もいらっしゃるので、
弔問に来ていただくのに恐縮していたが、
皆さん口々に「寂しい」「いい人だった」「大村さんのおかげでやってこれた」
「これからも頑張れ」と言って涙を流して早すぎる死を悼んでおられた。
 
一見我儘で、大変個性的な方だったが、それ故に腹を割って話が出来たり
商売が出来たりしていたようで、素晴らしい絆を結んでおられたのだなと、
亡くなってあらためてその魅力と人柄に気付かされた。
 
スズキの会長、鈴木修氏の言葉にこのようなものがある。
 
私には、会社経営について、ひとつの確信があります。
企業は一時的に順調でも、いつまでも順風満帆で
成長していけるものではないということです。
周期的に危機がやってきて、それを克服できればよりたくましくなりますが、
その波に飲まれると成長が止まってしまう。
最悪の場合は倒産してしまうこともあります。
その周期の長さは、だいたい25年くらいではないでしょうか。
 
父が建設した現在の4,000坪の事業所は平成2年から本格稼働しているので、
今年は奇しくも25周年ということになる。
 
父が熱意を注いでいた商売の方は、時代に合った形で継続していく訳だが、
色々と困難なことも多いと思われる。
直接関係するのはTPPで、どうやら国は食品については
「食べ物は輸入物でOK、ただしお金のある人は国産を買うだろうけどね」と
判断したようで、諸々の交渉の中で農作物はダシに使われてしまった感がある。
TPPにより様々な国から外国人が来るようにもなるだろうから、
この国の食はさらに多様化して、世界でも希有な食文化になるのではないだろうか。
 
これから大きな転換期を迎えるにあたって、何も言わずに行ってしまった父に、
いつか天国で自慢できるような会社でありたいし、
これからも日本が素晴らしい国であってくれるよう祈りたい。
 
合掌。

 

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プロフィール

株式会社風土 社長 濱口陽行(ふうどしゃちょう はまぐちたかゆき)

1975年10月6日、東京都生まれ高知県育ち。普通科高校~大学法学部からIT関連のセールスを経て2008年10月1日に農業生産法人である株式会社風土を設立。

おいしいを、作ろう 株式会社風土

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