みやざき農業日誌

株式会社 風土のスタッフブログです。
風土スタッフの日々や、野菜に関する記事を記録していきます。


ブリーダーに訊いてみた ~おいしいかぼちゃの品種改良~

思えば2014年は4個の台風が宮崎に接近する台風の当たり年でした。

かぼちゃ作りに四苦八苦する風土と、それを支える種苗メーカーの品種改良担当者、野口さんと

同都城支店長、大嶋さんにおいしいかぼちゃにまつわる話を、品種改良の視点から

幾度となく脱線しつつ尋ねてみました。

冬至にかぼちゃを食しながら、創っている人や作っている人の思いを感じていただけますと幸いです。

大嶋:今年の出来はどうでしたか?

 
10aあたり200kgの出荷量となりました。予定の1/5しか採れなかったです。
 
野口:今年は10月5日に台風18号、10月13日に台風19号が来ましたしね。
 
台風対策で山間部でも作りましたが、風の影響が強かった上に猪による被害もあって、
例えばこんな傷物も多くなっちゃって。
 
大嶋:今年はかぼちゃが大変不足していますので、少々の傷物でも流通できるかもしれませんね。
   風土さんが納得するかどうかは別として。
 
苦笑。
 
大嶋:大きさや傷については分かりました。味はいかがですか?
 
正直なところ全く期待していた味にはなっていないのですが、品種の持ち味に助けられて
何とかお客様に出せるかな、という最低限のレベルは確保できていると思います。
あとは買った方が上手に調理していただければ(笑)、美味しいと思います。
 
大嶋:課題の多い年になっちゃいましたが、来年の話なんかはありますか?
 
今のところ、台風対策なんかはうまい手立てがないので考え込んじゃってます。
 
 
野口:秋についてはかぼちゃの肥大が鈍く、リスクも高いのでいかに収量を上げるかが重要です。
   春については産地間競争が激しいので、品種のこだわりを強く持って、品質で訴えて
   いくことが重要だと思いますね。
 
なるほど。では恋するマロンを秋に作るのは、収量を上げるという観点でいかがですか?
 
野口:「おいしい」と評価されているかぼちゃの中では、作りやすい部類に入ると思います。
   なぜかと言いますと、恋するマロンは1株からできるかぼちゃが1個だけになりやすい性質を
   持っています。2個目からは落果しやすいですよね。
   そのため、着果した1個の肥大力がありますから、大玉が狙いやすい=収量を上げやすいのです。
   春に作った成果が100点として、90点とはいかないまでも、80点台は狙える品種かと思います。
   
春、秋と同一品種で繋ぐことができるというのは、メリットとしては大きいですね。
 
野口:秋に作って天候に恵まれなかった時に、「小さいものしかない」「美味しくない」というよりは
   「量が少ない」という結果になった方が筋として通りやすいと思います。
   特にこだわったものを扱うお客様がいらっしゃる場合はより顕著でしょう。
 
──それはそうですね。しかし秋に作るのは何年やっても難しくて手ごたえが掴めないんですよ。
例えば肥大期の気温と日照時間を春と秋で比べてみると、春の肥大期である5月中旬~下旬の平均気温は
20℃くらいあります。日照時間の平均は5.5時間くらいです。
 
野口:そのくらいでしょうね。
 
──そして秋の肥大期である9月下旬~10月上旬の平均気温が21℃で、
日照時間は台風に左右されますが概ね5時間ちょっとあるんです。
今年は3.8時間しかなかったですけど。
 
野口:そうでしょうね。
 
──でも明らかに春の肥大と秋の肥大は違うんです。成り(なり=着果率)も違うんです。
 
野口:そうですね。
 
──そこで、なんなのかなと思っていろんな人の話を聞いたり講演に出かけたりして、
一つ要因として出てきたのが「水不足」というのがありまして。
肥大期の光合成に必要な水分が足りないんじゃないかという事で今年は水遣りの準備を入念にしたんです。
 
野口:なるほど。
 
──ところが雨ばかりの年になってその設備は稼働しませんでした。
ただ、全く水が無いピーカン続きの年よりは、雨ばかりの方が肥大すると確信しました。
理想では晴天傾向の年に水遣りをするのが豊作への近道だと思うんですけど。
 
野口:今年は台風というイレギュラーがありましたが、そもそも暑い夏に種を蒔いて、寒くなりながら
   成長させるというのは野菜にとって真逆の環境になりますから、収量減はある意味必然ですよね。
   充分に根が張る前に地上部が大きくなってバランスが悪くなりますし、熱い環境にあった野菜は
   寒さにめっぽう弱いです。
 
──うーん、なんだか納得いかないですね。
寒いといっても10月上旬でも最低気温が17~18℃ありますから。最高気温は30℃弱くらい、生育適温ですよね。
 
野口:株が最初に育った環境より寒いということと、先ほど申し上げた根量不足が大きいと思います。
   ただ、風土さんの場合は九州の中では栽培時期が早くて、8月初旬に種を蒔かれてますよね。
 
──はい。
 
野口:これはもう素晴らしくて、秋に作る時は種まきは早ければ早いほどかぼちゃは美味しくなるんですよ。
 
──そうなんですか!
 
野口:8月15日よりは8月5日、8月5日よりは7月25日、というように早いほど美味しくなります。
 
───へー、今度試してみます。
 
野口:ただ、早く栽培を始めると作りづらいです。それなりの努力が必要です。
 
──そうですね。うちでは根量を稼ぐためにすごく小さな苗を植えるのですが、今年は通り雨の後に
株元の土から蒸散される熱気で3割ほどの株が枯れてしまいました。
マルチに小さな穴をあけて直播をするか、株元にもみがらやワラを敷くとか、暑さ対策が必要ですよね。
 
野口:また、花が咲かないとか、実がつかないとか、確実に作り辛い時期です。
   ですが、できあがったかぼちゃは美味しいです。
   春に関しても、とりあえず作るだけという観点であれば暖かくなってから植えれば良いですが、
   味を追求するのなら早めに植えるべきです。
 
──春は早く植えると花粉が出ないし、遅く植えると肥大期が梅雨と重なるんですよね。
 
野口:事実として、春と秋ではできあがったかぼちゃの味は違うんですよ。これはもう、事実です。
   特に秋に植えた時は、その品種本来の味が出にくい、それなりの粉質感は出るんですが、
   甘さが足りなかったりします。
   それを補うために少しでも早く植えていることや、それが故にされている努力は、消費者の方に
   アピールしていくべきだと思います。それが作っておられる農家さんの権利を守るというか、
   そういうことだと私は思います。あ、生意気なことを言ってすみません。
 
──おっしゃる通りだと思います。今年は春も結構しんどくて、低温でなかなか実がつかずに
やきもきさせられました。でも着果したら肥大が良すぎて、初期の頃は3kgくらいの巨大な
かぼちゃがゴロゴロで、これはこれで流通させづらくて。
それを考えると秋のかぼちゃはどんなに大きくても2kgちょい、しかも1個しかならないというのは、
さっきの話に戻りますが、納得できないんですけど、逆にチャレンジしたいところでもあるんですよね。
 
ということで、そろそろ本題に入りましょうか。
 
 
後半に続きます。

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プロフィール

株式会社風土 社長 濱口陽行(ふうどしゃちょう はまぐちたかゆき)

1975年10月6日、東京都生まれ高知県育ち。普通科高校~大学法学部からIT関連のセールスを経て2008年10月1日に農業生産法人である株式会社風土を設立。

おいしいを、作ろう 株式会社風土

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